お知らせ

積雪が多い地域における家の特徴について、皆さんが感じていることには何がありますか。数あると思いますが、その1つに、階段が挙げられるのではないでしょうか。

また、60歳以上の方が日常生活活動上で困難だと考える動作の上位5つに階段の昇り降りが入るという報告もあり、年齢を重ねるごとに不安を抱きやすい動作でもあると思います。そこで今回は、「階段の昇り降り」について、少し考えてみたいと思います。

　まず、階段を昇り降りする時のバランスをとるためには、筋力や関節の動きに加えて、注意力や情動（自信・恐怖心）、感覚、空間を把握する能力、そして運動戦略（予測して姿勢を制御すること・思わずバランスを崩した時に反応できること・階段の高さや手すりの位置など環境に即した姿勢が取れること等）など、幾つかの要素があります。その中で、皆さんが不安に思う要素は幾つあるでしょうか（下図参照）。特に、階段での昇り・降りでは、それぞれ体の使い方に違いはありますが、主に活動する筋肉は、①太ももの前（大腿(だいたい)四頭筋(しとうきん)）、②ふくらはぎ（ヒラメ筋）、③お尻の後ろ（大殿筋(だいでんきん)）、④お尻の横（中(ちゅう)殿筋(でんきん)）の4つが挙げられ、リハビリを行う上でも念頭に置いて運動をすることが多いです。

萬井太規：階段昇降バランスの診るべき視点,理学療法学,2022;49(1):83-91.　より引用

では、どの程度の筋力があればよいのか…、以上に書いた筋肉は一般論として挙げられる筋肉であり、体格や年齢等によって変化する要素です。したがって、詳細はリハビリなどで筋力等を評価させていただく必要がありますが、幾つかの報告では、昇る能力が高いほど片足立ちを保つことができる例が多いと言われています。

しかしながら、ケガ等で筋力が不十分な方もいらっしゃるかと思います。その場合、昇る時は不安の無い足から、降りる時は不安のある足から出していただくことで、動作に対する不安やバランスを崩す危険は軽減できると言われています。

最後に、階段の昇り降りでの転倒・転落は、平らな場所での転倒よりもケガの危険が高く、国内の転倒死亡理由の約18%を占めるという報告もあります。したがって、今回ご紹介した片足立ちや足の出し方については、バランスを崩す危険があるため、不安のある方は無理をせず、当院にご相談を頂ければと思います。そして、安全に階段を使うためには、筋力や関節の動き以外の各要素が互いに作用し合うことが大切ですので、上図をご参照いただき不安の軽減につながる一助となれば幸いです。

🌷パーキンソン春うららクリニック🌷